Brian&Simoneとの夕食。実はSimoneはうちから2分も離れていないところに家を借りており、はたまた、部屋をシェアしているのはBrianではなく、Peterという40近くの男性であり、Peterはクラブやライブ会場で写真をとるという仕事をしている男性で、今晩は、僕はよく知らないんだけれど、有名なDJが回すらしくて、そのインタビューをカメラに収める仕事なんだよ、と言っていた。彼の部屋をのぞくと畳の上にお布団が敷かれてあってレコードが並んでいた。彼が好きな間接照明は覆いが和紙でできたもの。
さて、今回の夕食では、Raclette(ラクレット)というスイス料理をもてなしてくれた。スイス料理といえはいの一番にFondue(フォンデュ)が出てくるかと思われるが、Fondueがチーズのお鍋だとすると、RacletteはチーズのBBQに相当するのではないかと思う。RacletteもFondueもBrian曰く、スイスはスイスの料理だけれど、単語の発音からも想像できるように、フランス語圏からやってきたものなのだよと言っていた。ちなみに伝統的なRacletteというのは、焼いたお肉なり、野菜(じゃがいも、ズッキーニ、マッシュルーム、パプリカ、玉ねぎなどなど)なりをお皿に準備しておき、大きな大きなチーズを半分に切った、その切り口のところを火などの熱を当ててチーズをとろけさせ、そのとろけた部分を、ナイフのようなものでお肉なり野菜なりの上に切り落として、そのとろけるチーズ一緒にいただくというもの。つまりは、”1チーズとろけ”に対し1人分しか賄えません。よって、たとえば8人いたら、最初の人のお皿にチーズが乗ってから、最後の人にチーズが乗るまで相当な時間がかかるというたいそうおおごとな料理。ちなみに、Damiane&Melanie夫妻は、この伝統的おおごと料理を30人くらいでやったことがあるらしく、その大きな大きなチーズを用意するためには、チーズ屋さんに突然行っても大きなチーズは売られるためにすでに小さくカットするので、前もって大きなチーズを注文しておくんだよと言ってた。しかしながら、今ではその、溶かして、切って、他の人が食べているのをよだれを垂れ流して待って、という行程をなくした、Raclette Grillという焼肉プレートに近いものが存在します。プレートが2段構造になっており、上部ではお肉なり野菜なりを焼き、下部では、チーズを載せるための卵焼き器の小さい版を載せて熱で溶かします。全員が時間差なく同時にRacletteを食べることができる。素晴らしい。

また、Racletteは自分のお皿でオリジナルの味を作成するというのもまた一つ楽しいことでもある。ソースは多種多様にあるようだが、今回は、カレーソース、ハーブソース、カクテルソース、それからもう一種類(失念)を用意してくれた。ピクルス(きゅうり、ベビーコーン)を食べたり、休憩を入れたり、サラダを食べたり、白ワインをカッパーと飲んだり、なぜに白ワインかというと、ビールとチーズは相性が悪いので、つまりは、お互いが胃の中で発酵しあって膨満感に打ちのめされるのが目に見えている、よって、Fondue、Racletteともに、飲み物は白ワインか紅茶か、というのが定番である。と、楽しく美味しくいただけた。

今回は白ワインを持参、スイスのNeuenburg(ノイエンブルグ:新しい城)のワイン。Neuenburgというのはドイツ語であり、フランス語では、Neuchatel(ヌーシャテル)のことで、ワインを手に取った時はNeuenburgってどこだったけと思いながら買ったのだが、SimoneがNeuchatelのワインね。クール。と言ったので、Neuchatelがドイツ語だと、Neuenburgなのだった。というのに気づき、さらにNeuchatel州のMotier(モティエ)はあの強い強い苦いお酒のAbsinthe(アプサント)の場所だというのを思い出し、話をした。

さて、Racletteをたらふくいただいて、おしゃべりの時間にはお仕事のために寝ていたPeterも加わって、自分たちが幼かったころ、今思えばなんであんなに好きだったのかが分からないという、恥ずかしい音楽の思い出を話し、Youtubeで見ては笑って、見ては笑ってというのをやり、ドイツ出身のバンドで好きなのがあるよ、と言って、CANやMouse on Mars(火星の鼠、だ。)などなどのお話をし、偶然にもこれまたドイツ出身の、Einstürzende Neubauten(アインシュツルツェンデ・ノイバウテン:崩壊する新建築)のアルバムを持っていたので、Einstürzende Neubautenを聞きながら夜は更けていくのであった。でも、おっかない。