スイスで会話されるドイツ語はいわゆる標準ドイツ語ではなくて、Schweizerdeutsch(シュヴァイツァードイチュ)であり、スイス・ドイツ語というのだが、これもまたスイス・ドイツ語でいうと、Schwyzerdütsch(シュビッチャーデュチュ)というのである。

スイスは26のKanton(カントーン・州)があり、そのうちドイツ語圏はフランス語やイタリア語が混じっているKantonもあるけれど、だいたい20Kantonenくらいである。しかしながら、そのすべてのKantonでSchwyzerdütschが話されるのではなくて、それぞれのKantonに方言がある。チューリッヒ・ドイツ語、ベルン・ドイツ語、ザンクトガレン・ドイツ語、バーゼル・ドイツ語などなど。これは有名どころのSchwyzerdütschであるけれども、そのKantonの中にもこれまた細かく分かれた方言があるようで、この前、お会いしたSchaffhausen出身の女性(舌にピアスが刺さっていた小学校の先生)は、うちのKantonには少なくとも3つは方言があるわよ、と言っていたので、その数ははたしていくつになるのやら。でも日本も47都道府県に方言があり、私の実家のある県でも、東側と中央と西側とで若干違いはある。免許更新の時に受ける講習で、警察官の方言が私の知っている方言と全く違うので、何をいっとるかわからん、と目が白黒なったのはこれ事実であって、集落、村、町はたくさんあるけれども、丘で隔てられていると方言が違ってくるのであるのだなあ、と改めて感じました。
で、チューリッヒに住んでいると、スイス・ドイツ語もしくは、チューリッヒ・ドイツ語、、ま、どちらがスイス・ドイツ語で、どちらがチューリッヒ・ドイツ語なのかというのはわかりませんが、聞こえてくるのです。たとえば「良い一日を」というのは会話の最後によく使われます。スイス・ドイツ語でつづりが分からないのは空耳アワーでお願いします。
ドイツ語:Einen shönen Tag(アイネン・シェーネン・ターク)
スイス・ドイツ語:En schöne Tag(エン・シェーネ・ターク)、もしくはScöne!(シェーネ)のみ
そしてこのあとには「ありがとう、あなたもね」という会話で終わるのですが、
ドイツ語:Danke, gleichfalls.(ダンケ、グライヒファルス)
スイス・ドイツ語:ダンケ、グリィーヒファルス
と、おおよそ” –ei ”の発音は“アイ”なのですが、そこを“アイ”を読まずに“イー”と延ばすようです。そのいい例が朝市で、初めて行くお店で卵を買った時のお話。「茶色か白か」と聞かれたのですが、
ドイツ語:Braun oder weiss?(ブラオン・オーダー・ヴァイス)
スイス・ドイツ語:ブリューニ?ヴィーセ?
最初、「はっ?」となりましたが、卵を買う時にはいつも、茶か白かと聞かれるので、「これぞ、、、」と思って「ブリューニ、ビテ(茶色ばくださいな)」と、スイス・ドイツ語で答えました。はたまたウムラウト付きのuの発音も結構多いなあと思います。あとは” –ch ”の発音はだいたい”ヒ”。ドイツ語だと濁りのない“ヒ”、スイス・ドイツ語だと喉をガっと鳴らす、濁った“ヒ”です。文章ではうまく伝わりませんが、今度お会いする方にはお披露目します。ドイツ語もスイス・ドイツ語も強靭な気道が必要な気がします。

最後に、現代の若者言葉について。あまりというかほとんど知りませんが、何かにつけて「すごい」という表現は”Super(スゥッパー)”だったり、”Ganz toll”(ガンツ・トル)という表現をしますが、これは若者言葉においては、” Mega(メガ)”といいます。日本語で言うところの「パねえ」でしょうか。しかしながら、Megaなんて古いですね、中川翔子さんはすでに「ギガんと」という”Mega”の上位単位”Giga”を使っておられたのですから、というわけで次は”Tera”がやってくるかもしれませんね。というわけで、提案しておきたいと思います。関東圏では「テラパねえ」。また、私は使ったことはありませんが、隣の県の東の方では「ちかっぱすごかー」というのを言っておられたので、「テラっぱすごかー」というの提案しときます。博多では「ばりすごかー」ですね。ラーメンのものすごい固いゆで方は「バリかた」ですね。方言よ永遠なれ。