父親はスイス出発前日に某地元チーム対隣の県のチームのサッカーの試合を見てやってきたせいなのか、その、サッカーを観戦するという気持ちをここまで背中に抱えてきたようで、ホテルのチェックインまでまだまだ時間があったので、空港から直接、私たちのアパートメントに着くなり、地元のサッカーチームの試合があればそれを見てみたい、といういろいろ案を考えていた私の頭の中にはなかった、予想だにしなかったスイス旅行の提案を言ってきた、、、というのは今回の旅行はZermattに2泊、Grindelwaldに1泊ということだけ決めていて、長時間の旅行の疲れもあるだろうし、あとは様子見でその日その日を決めて行こうというゆるい枠の10泊11日の旅行なので、こっちでサッカーの試合を見たことない私は、まずは地元FCZ(Fussballclub Zurich)のホームページを調べて、料金って場所によって違うけどこんなに高いのか!(Jリーグでいうところの1次リーグ)と驚いたり、次のホームでの試合相手はYoung boysという名のスイスの首都Bernのチームであることにチューリッヒ・ドイツ語とベルン・ドイツ語の戦いですのう、といろいろ思うことありでした。

当日、夫の人は仕事なので、私と両親の3人でFCZのホームグラウンド、Stadion Letzigund(シュタディオン・レッツィグルント)にトラムで向かいましたが、うちの家からLetzigrundまでは3駅目なので、もうすでぎゅうぎゅう。選手のサインが施されたユニフォームを着た少年とその父親(みごとなスイス体型)、多くは男性ばかりでしたが、試合前で気分も盛り上がっているのでしょうか、いや、試合前に気分を盛り上げているのでしょうか、ビールをカパカパと飲んでおられました。Letzigrundに着くなり道路はビール瓶や缶やらがごろごろと転がっています。チケットの買い方もよく分からないまま到着しましたが、どういう位置にどういう人たちが座るかというのは父親の方がよく知っているので、会場図が描かれた看板を見て、名称を度忘れしましたが、選手がグランドに出てきて並ぶとお尻が見える側、ということで決定。いざ購入ですが、ブロックによって購入窓口も変わります。右方面へ移動するとようやく窓口発見。でも不安になって、前に並んでいるおじさんに、恐る恐る、「C20ブロックのチケットを買いたいんだけれど、ここで間違いない?」という、標準ドイツ語かつ文章みたいなドイツ語(ここはチューリッヒなのですからチューリッヒ・ドイツ語を話す人ばかりなはず)で聞いてみると、さっきまで前を向いていたはずなのにで、そのおじさんの前の、さらにその前のおじさんまでぐるりと私の方を見てくるのでした。緊張!でも、おじさんは丁寧ににっこり笑って教えてくれたのでひと安心。無事購入を終え、試合は始まります。アナウンスは見事にチューリッヒ・ドイツ語で、おやまあ、と思いましたが、やはり選手と選手の間のボールのパスがスムーズであることと、試合にスピード感があると面白いですね。うまい人がやるのは何を見ても面白い。結果はFCZは負けてしまいましたが、どういうときにどういう言葉を言うのか、はたまた、どういう体の表現をするのかというのがなんとなくわかってこれもまた面白し。

シュートをしてぎりぎりはずしてしまった時:ウ ィ(Oui、ではありません。びっくりするくらいみんな言う)
ファンの目で見れば大したことないのに審判に選手が反則を取られた時:ブゥー、そして、その場所を指差して隣の人に、何でだ何でだあれが反則なのか??ということをひとしきり説明する。
なぜだーというとき:まず頭に両てのひらをつけ、その後、両手を上げる。

体の表現が面白くてそれだけでも満足です。一方、ファンゾーンの席は発煙筒は出すわ、いろんな歌があるわで、試合中のエネルギー消費量は選手と同じくらいなんじゃないかしらと思いました。

 選手が並ぶ
 FCZのファンのみなさま
 発煙筒祭り

それでもってこのLetzigrundはグラウンドを掘り下げて作ってあるので、日本のスタジアムのように、入って階段を上ってそれでもってまた階段を降りて、というのではなく、ブロックごとに振り分けられた入口を進むともうそこは観客席という構造で、出入り口もたくさんある。また、ブロック間の階段にブロック番号と列番号が表示してるのでこれまた分かりやすい。たとえばC20とC21の間の階段で14列目だとしたら、階段にC20 14 C21と書いてあるのです。はたまた、このLetzigrundはスイスはチューリッヒ生まれのMax Frischの作品です。彼は作家として有名なようですが、もともとは建築家。この機能的なつくりはスポーツ観戦初級者の私ですら、素晴らしいと思いました。