「くちぶっえはなっぜーとおくまっできこえるの〜」から「クララのバカー」と叫ぶところまでこんにちは、ハイジの村といわれるMaienfeld(マイエンフェルト)に行きました。ZürichからChur(クール)方面に向かう列車に乗り、Sargans(ザルガンス)かBad Ragaz(バート・ラガーツ:バードは温泉という意味もある通りここには温泉があります)で普通列車に乗り換えるとMaienfeld。この道中、日本から来られた、父親より下で母親より上らしいつまりはDANKAIの世代らしき女性と一緒になった。ことの始まりはZürich駅でMaienfeldの説明を両親にしていたところ(一応現地添乗員です)、「あのー、ちょっといいですかー?」と来たのがその女性。誰でもウェルカムな父親は「おひとりですか?一緒にどうですか?」といったのが間違いだったのかそうでなかったのかはちょっと明確な発言は避けておきます。いざ着席するなり彼女は弾丸のように喋りこちらはあいづちすらままならず、ふと思いついて「わたし、しゃべりすぎかしら」とは言うものの、彼女のおしゃべりはとどまるところを知らず、永遠かと思われた私たちが乗り換える駅までのあの1時間半、彼女の独壇場でした。すごかった。夫もいらっしゃる人なのですが、あるときスイス旅行に行った時にスイスに魅せられて、それから15年間毎夏にここへ一人で旅行に来ているんだそうです。若輩者の私が言うのもなんですが、彼女はスイスに期待を抱きすぎというか、夢を見すぎというのでしょうか。海外にいっぱい旅行に行かれておられるようですが、海外よりも、スイスよりも、まずは日本についてしっかり勉強してください、と思いました。あまりに日本についての知識がぽっかり抜けていて、この私ですら、えっと思うくらいですから。何とも悲しいことよ。
さて、ハイジの村ことMaienfeld。なぜにここに来たかというと、両親が家を空けるにつけて一番の問題は鯉の世話。彼・彼女らは水が汚れると翌朝見事に水面にぷかぷか浮かんでくるわけでして日頃の浄化槽掃除が欠かせません。わさびもじゅんさいも水が命です。ということで姉夫妻に実家の留守番をお願いすると、姉が「ハイジの村でハイジの絵本を買ってきて」ということを所望していたのでここまでやってきました。「フランスのエヴィアンに行ってエヴィアンの水を汲んで来て」というのと同じ感覚ですね。でも実際はハイジの絵本は村に行かなくても同じものがもっと格安で下界で売っておりますけんね、わが姉よ。
ハイジの村よりも何よりも私が驚いたのは葡萄畑の数。目の前に広がるのは山と丘と葡萄畑という風景でした。壁にかけている大きな看板を見るとここにはたくさんのワイナリーがあるようで、今の時期は事前に予約しないと入ることができないようだけれど、秋になったらまた来てみようと思いました。また、ワインについては全く知らないことだらけなのですが、フランスのワインだと「Chateauなんたら(Chateauは城)」という名前がつくように、ここスイスでハイキングをしている最中にお城を発見するとそこのたもとにはブドウ畑が広がっているので、ここMaienfeldもかつてはお城があったところではないのかしらと想像しました。どうなのでしょう。

Heidi Wegと赤い看板で記された道を延々と歩くと、ようやくHeidihaus(ハイジハウス:博物館)です。小さい建物で特に維持費はかかっているとは思えないのですが、7CHFが必要です。よくよく考えると私たちがやってきた方向とは反対からやってくるわやってくるわの日本人団体旅行客が主な収入源なんでしょうね、やれやれ、と山羊に話しかけましたが、いつだって山羊の視線はどこを向いているかわかりません。犬や猫とは異なる受け口の口元に毎回うっとりさせられます。

口を開けずにメメメと鳴きます。

団体の皆様はバスで帰っていかれましたが、私たちは歩いて駅へ向かいました。結構いい運動です。駅の近くまで来た時に、この村の小さい子供たちが私たちに向かって「こにちは!」と言っていたので、アジアの顔を見てすぐさま、中国語でも台湾語でも韓国語でもなく、「こにちは!」が出るということはそれだけ日本からやってきている人が多いのだなあとつくづく思いました。宮崎駿さんの力ってすごいなあと思いました。私は「クララのバカー」の場面が好きです。というわけでクララが座っていたであろう車いすを公開です!