ドイツ語学校の第二段階が始まった。
先生は前回と同じくFrau Grafであるが、受講者は私とWendy(スコットランド出身)以外は、初めて会う人ばかりであった。年齢層はぐっと上がり、私が下から3番目ぐらいであり、スイス在住歴が5年とか10年以上とか、私なんかよりもずっと長く、老眼鏡をかけている人が3人(Frau Grafを含めると4人)、孫がいる人が1人いて、、、というこれまた面白そうなクラス。そして、彼女らの出身も様々であり、アメリカ、イスラエルコモロスコットランド、タイ(4人!)、チリ、ブラジル(2人)、メキシコ、それからもうひとつ、失念しているのが、フランス語が公用語の一つであるアフリカのどこかの国。
そしてなんといっても皆様、ドイツ語の文章がすらっと出てくる方ばかりなのである。第一段階から第二段階への飛躍たるや。いきなり四速ですか、という気持ちがありましたが、授業後にFrau Grafが、最初のクラスはとってもゆっくり授業を進めたからね。今回のクラスでは私の話し方も早くなっているでしょ?でも、あなたにとってはよいクラスだと思うわ、と言ってくれた。ま、基礎の基礎をゆっくり学ぶことができたという点においてはよかったと思うが、今は、毎回の授業で黒板をガン見、みんなが分かって自分が分からない単語(結構多くて泣きたくなる)は、水面の白鳥の様に優雅に電子辞書で調べて(実のところは必死)、授業後はけんかに負けた猫のように打ちひしがれて帰宅する。そんな毎日。そして受験生の気分。

で、コモロ出身の彼女について。
コモロ連合はアフリカ大陸の東側、インド洋に浮かぶ小さな島々からなる国。彼女が信仰している宗教はおそらくイスラム教なんだと思う。なぜかというと、彼女の服装からそう思えるから。腕から足から一切見えない長いワンピース(正式名称はなんだろうか)に、頭、首はスカーフで覆われ、顔だけが見えるという格好。イスラム(教)圏の女性の格好である。そしてコモロはその昔フランス領であったので、彼女はアラビア語コモロ語に加え、フランス語も話す。もちろん今はドイツ語も。そして、フランス語に関して、彼女の話すフランス語を聞いたのだが、今まで耳にしたフランス語の中で、私にとっては一番美しい音の鳴り方とリズムだなと思った。もちろんフランス語特有の抑揚はあるんだけれども、それが強すぎない。のどを鳴らして出す音も何かが違う。彼女の話すフランス語を聞いて、大げさではなくあっちの世界へ行ってしまいそうだった。本当にうっとりする会話の仕方。朗読の上手な人にレストランのメニューを読ませて食欲を増進させるというのがあったかと思うが、私にとっては彼女の話すフランス語が食欲増進でなくても、うまくいえないけれど何かうっとりするものがあった。でも、彼女にとってフランス語を話すということはどういうことなのだろうと思うし、どういう気持ちなのだろうと思う。で、私の国のことについては一切考えないで書くけれども、彼女を見ていると、フランスは学校で宗教が特定できるような格好をしてはいけないという法律を立てているが、何かおかしくないかしらと思う。コモロについて言えば、被植民地の国はイスラム教の国であるのに、それを無視するようなものである。しかしながら、ある国を植民地化するということは何でもかんでも暴力的に“なし”にしてしまうものなのであり、被植民地の人がどうあがいてもそれはどうしようもないのだろう。悲しいかな。で、数年前その法律が成立するかどうかという丁度そのときに、HERMESのスカーフの広告を見たのだが、それはそれはその法律に対してとてもクールな対抗馬を出してきたので、私はしばらくその広告にみとれました。やるなあ、と思ったけれど、それもやはり小さな抵抗にしかならず、大きな力は津波のようにあらゆるものをかっさらって行ってしまうのだなあ、と改めて思う。さて、彼女のコモロ語はスイス国内では家族の会話だけで使われるものなのだろうか?フランス語があれだけうっとりする話し方なので、彼女のコモロ語も聞いてみたいなと思う。