この日は雲ひとつない快晴。

冬のスイスの天気はどんより曇り空が続くことが多く、毎朝、部屋の窓から外を見て、今日は散歩ができるだろうか、とか、今日は走れるだろうか、とか、まるで散歩を待つ犬のような気分の毎日であるが、今日、この日に限っては耳の垂れた犬ならばその耳をひらひらさせて前足をまっすぐ伸ばして走りだしていることは間違いないであろう素晴らしい天気。


ユースホステルでの朝

朝、スキーとボードをする人たち(もちろんこれらをする人が多い)と山に登る人たちとに分かれた。もちろん私たちは後者。Dirk(オランダ出身)、Lorenzo(スペイン出身)、Laura(フィンランド出身)、夫の人と私の5人。Grindelwaldから登山列車に乗りKleine Scheidegg(クライネ・シャイデック)まで。ここKleine Scheideggはスキー、スノボー、橇をする起点となる場所でありそこからまた上にあがるにはリフトを使って上がっていく。Kleine ScheideggからThe Top of EuropeのJungfraujoch(ユングフラウヨッホ:3454m)まで上がる列車の発車時間まで時間があったので、老若男女が気持ちよさそうに滑っている姿を見る。すぐ下がちょっとした坂になっていて、皆さんあれよというまに姿を消していく。身の丈が1mもないんじゃないかと思われる子供もすいすいと滑っていくのでもう羨望の眼差しです。日本のスキー場、といっても広島しか行ったことないけれど、と違って、いろんなコースがあり、狭苦しいことは全くない。そして、スキー・ボードのコースと橇のコースは別に設けられている。そして日本と違うのなあ(しつこいですが比較対象は広島)と思ったのは、こっちの人はヘルメットをかぶって滑っている人が多い。


Kleine Scheideggからの眺め

さて、Kleine ScheideggからJungfraujochへ向かいます。同席した2人の子供連れのお母さんがこれまた面白くて、ペラペラぺらぺらと話してはRivella(リベッラ:スイスの飲み物・チーズを作る際に出る乳清(lactoserum)を使ったヤクルトのようなリポビタンDのような味の微炭酸飲料)をがぶがぶ飲み、ワハハハと笑っては、サンドイッチをぱくぱくほおばり、おおお、これぞマンマや、と思いました。
そのお母さんとはドイツ語で会話をしていたのだが、Lauraの話すドイツ語はど素人の私が聞いても母国語なの?と思うくらい流暢でした。ドイツ語圏ではない人が話す、流暢なドイツ語、というのをこれまで聞いたことがなかったので、さっきのスキーをする子供に続いて羨望の眼差しである。もちろん口は半開きね。さすがフィンランド仕込みの教育、かどうかはわかりませんが、全くぶれることがなく全く淀みがなく本当に素晴らしかった。で、Lauraにフィンランドの語学事情を聞いてみると、12歳くらいから英語とスウェーデン語とドイツ語を学ぶらしく、高校、大学からさらに加えて2言語以上学ぶ人もおり、自国のフィンランド語以外で少なくとも3言語以上は拾得するようなシステムなのだそうだ。英語に関して言えば、私も同じような時期に学び始めたはずなのにこの違いたるや愕然とします。

さてはて、高山病回避のため、Jukkoさんから頂いたガムみたいなのを噛みながら、列車はどんどん上がっていった。途中、同じ列車内のどこかの赤ちゃんがギャーと泣き叫ぶと、さっきのマンマがこんなとこに小さい赤ん坊を連れて来てはいけないわ。ほら、列車だと急に上にあがるでしょ、それで、赤ん坊は急激な気圧の変化に耐えられないのよ、耳が悪くなっちゃうわ。信じられない、と言っていた。確かに。私ですら若干、頭がぼーっとする感じがした。そうこうしているうちにThe Top of EuropeのJungfraujochに到着。酸素が薄いせいか、眠たいような、低気圧の時の頭痛のような感じがしました。いつものペースで階段を上がっても、すごく息が切れ、頭がクラクラする。確かに注意書きに「ゆっくりのぼってください。」と日本語で書いてあります。日本語!そう。驚いたのが、案内などの表示がスイスの公用語であるドイツ語でもフランス語でもイタリア語でもレトロマンシュ語でもなく英語と日本語なのでした。驚いた。どれだけマネーをドロップしとんの?と思いましたが、私も日本人だったのでした。
建物の外へでると、雪に覆われたEiger(北壁以外)、Mönch、Jungfrau、そしてGletscher(グレッチャー:氷河)がお出迎え。雲ひとつない吸い込まれそうな青い色と反射する雪の白とが織りなす信じられないくらい美しい風景が待っていました。街で見るスイスの建物も美しいと思うけれど、こういうのを見せられちゃうと自然には叶わんなと思います。そして何も言葉はいらんね。と思うのは私だけだろうか。



ずっとずっと向こうにはドイツが見えるはず




MönchとJungfrauの間のGletscher




アルプス鳥、これはPilatus(ピラトゥス)でも見かけた気が




Mönch




Jungfrau