スイスの鉄道に乗っていると車窓から見える風景は緑であり丘でありそしてなんといっても牛やら羊やら山羊やらの姿である。最初のころは牛やら羊やら山羊やら、たまに馬だ、と新鮮だったのですがそれがデフォルトになってしまっている今、BolognaからMilanoへの、はたまたPadovaにもいったのですが、その地までの車窓から見える風景は牛やら羊やら山羊ときどき馬にお目見えすることは一切なく、ずーっと続く平地かつ農地ともんやりしている霧の風景でした。あれだけ牛やら羊やら山羊やらがその辺にいるのでそりゃあスイスの乳製品は美味しいというのは言うまでもない。

BolognaからMilanoまでは日本でいうところの新幹線のような存在であるEuro Star AVというのに乗車。BolognaからMilanoまではノンストップで上記のとおりの霧で平地の風景ばかりでした。Milano Centrale(ミラァノっ チェントラーレッ)のホームに着くとさあ、買いなはれといわんばかりのDomenico Dolce とStefano Gabbanaの二人のデザイナーのイタリアブランドDolce & Gabbanaの広告がどーんと迎えてくれます。ホームから外に出るときもD&G, D&G, D&Gの広告が三つ巴でお迎えです。


Milanoで特筆すべきこと。Milano CentraleからDuomo(大聖堂)には地下鉄でいくのですが、地下鉄の切符売り場までやってきます。果て、と立ち止まったら、えらくかわいらしい格好をした女性とばちっと目が合うとその女性が「Duomoに行くのか?」と遠くから聞いてきたので思わず顔を縦に振ってしまった。するとおいでおいでとする。振ってしまったあと、これは噂の、と思いその女性が向こうのほうに行くまで「No, Grazie.」と言い、女性が向こうに行ってしまったので、今のうちにと切符を買う。すると、あれよというまにすぐ横に来て、私たちがDuomoに行くということを知っているので、勝手にボタンを押していく。しかもそんな何回も押さんでいいよというくらい。私は「NO! NO! NO!(@Seagull Screaming Kiss Her Kiss Her)」というのに、女性「往復か?」私「ノ!」女性「ほかも行くのか?」私「ノ、ノ、グラツィエ!!(二重否定で肯定の意味にとられたのか?そんなまさか。The Massacre)」といってもばんばんボタンを押してくる。で、おつりが出てきたらささっと手を出して、案の定、「お金ちょうだい」という。悔しいのだがボタンを押させてしまった私たちが負けだわと思い20セント渡すと足りないようで手を引っ込めないので追加で50セント渡すとさっと逃げて行った。This is Italy. もっとお尻で突き飛ばすぐらいの気持ちがないとだめだなあ、でもそういうのはいやだなあ、というふたつの間でうなだれる。

無事Duomoに着いて、地下から地上へ出るとはっとするような、須賀敦子の表現によると白い百合のようなDuomoが迎えてくれるのが、うっとりして立ち止まっているとすぐ声をかけられる。「写真を撮ろうか」「鳩の餌はどうだ」とか、その他、いやになるくらいたくさん。全部「ノ!」「ノノ!」と答えましたが、あれはさも親切そうにやってくるのですが、しっかりお金取る。Milanoでは本当に「ノ!」ばかり言っていた気がする。

Milanoはお買物の地。Duomoの横はいわゆるハイブランドのお店が立ち並ぶところなのだが、Marc JacobsさんよろしくLouis Vuittonの向かいにはMc Caféがあるという、どっちもメリケンからやってきておりますね。看板の地が黒でMが金色のマック(関西では、マクド)なんて初めて見ました。Louis Vuittonの横の蝶ネクタイで白いジャケットを羽織ったカメリエーレ氏が迎える高いカフェにはほとんど人がおらず、方やMc caféにはあのトレーをもった人たちがまさに寿司詰め状態。なんだかとても奇妙に感じる。せっかくイタリアに来ているのだからご飯もおいしいのを食べようよと思うのですが、まあ、Macの立地があまりにも素晴らしいので便利さと安さを考えるとそうなるのかなと思う。確かにMilanoの中心街の外も結構歩いたけれどもどれもBolognaよりはかなり観光地価格の設定。また、Milanoに住んでいる人たちがどういう生活をしてどういう市場にいってというのが遮蔽されているような気がして私たちのようなお金もそんなにないただ歩くのが好きだという方には人の多さに、いろいろなまやかし(そしてお金を取られる)に、ハイブランドのパチモンが堂々と売ってあるのに、Milanoは都会であるのう、というのをしみじみ感じ、特にDuomoからSforzesco城までの大通りはまるで銀座の目抜き通りのようでした。

追記
夕方Milano Centraleの地下鉄に戻ったとき、非公認切符案内係が女性から男性になっていた。案の定、ボタンをばしばしばしばし押していた。なんか唖然とする。