Zürich市は、たくさんの語学講座を提供しており、先月末、ドイツ語講座、一言語の講座でさえ、たくさんあるので、カウンセリングを受けた。カウンセリングはもちろん英語であって、1対1で英語を使って会話をするのは、私にとって非常にハードルの高いもので、ロンドン留学で神経衰弱になった夏目漱石と同様に、といっても漱石と比べるのは何と土俵違いなことかと思うのは当然だが如何せん今読んでいるのが文人悪食であるので漱石が出てくるのは致し方なし、というわけで、読めるものの話せない、聞き取りはある程度できるものの話せないというもどかしく不安要素たっぷりのまま、緊張の面持ちでカウンセリングへ向かったが、何ら問題なく話は進み、9月から始まる女性だけのドイツ語講座で、1回2時間半、結構みっちり、週2回、朝市の日、6カ月、冬の雪の日はどうなるのかしら、の講座を受けることとなった。

この日が最初の日だったのだが、私は異様に早く来てしまったので、同じく異様に早くきてしまった方と話をすると、スイスに来て2ヶ月、だとか、1か月という方であった。いずれの方、同様に相手もそうだと思うが、聞きなれない名前なので、名前を覚えていないが、フィリピン出身の彼女の英語は、私にとっては聞き取りにくく、そしてすごく早い。話を聞くだけで精いっぱい。インド出身の彼女は、まつ毛の密集度と長さ、そのカール具合はマスカラのCMにでも出てきそうな完璧さであり、顔立ちも美しい。同じくインド出身のジュンパ・ラヒリもこういったかんじで美しいのだろうな、とため息が出るほどでした。

さて、授業。講師はもちろん女性。私は確か、カウンセリングの際に、英語でドイツ語を教えるから、英語もドイツ語も勉強になるわよ、と聞いていたはずだが、講師Frau GrafGraf夫人、雑誌のフラウはここからきているのですね。ああ、シュテフィ・グラフよ)は、ドイツ語しか使わない。生徒から質問があったときだけ、ほんの少し、本当に少し、英語を使うけれども、極力ドイツ語しか使わないようだ。突然Das bin なんとか、とか言われても、んん?と思うのだが、ジェスチャー付きの説明を何度もやり何を言っているか徐々に判明してくる。これはよい勉強になるのではないか、と思う。

ちなみに、受講生は12人。自己紹介をドイツ語でやり、自分の出身地もドイツ語で答えるのだが、アフガニスタン、アルゼンチン(2名)、インド、オーストラリア、キューバスコットランド、日本(2名)、ブラジル、リベリア、という、世界地図をあっちこっちと行き来する出身地であった。アフガニスタン出身の彼女は、にこやかでとっても人当たりがいい。こんな子を悲しませることをしては絶対にいけないよなあ、と純粋に思うのですが、そういうことを思わない/感じないが方々がおり、いつであれ争いのないときはないのであり、どうにかならんかね、と思うのである。

一つ気づいたこと。ドイツ語で、”Ich”は”私”であり、「イッヒ」と発音するのであるが、フィリピンとインド出身の彼女らはこれを「イッキ」と発音してしまう、というか、Frau Grafが発音を教えるのだが、それでも「イッキ」としか発音できないようだ。どうも、「ッヒ」という発音がすごく難しいようで、これはフィリピノ語とヒンディー語(確かヒンディー語を使うと言っていた、インドは恐ろしいほど公用語がある)とで何か共通するものがあるのかな、と、二人の間に挟まれて思ったのでした。