Drei Buecher des Jahres

2011年における3冊の本。新刊本でなくともよく、どれがベストではなく、いずれも並列、ということで夫の人と口論、、、しないけど。


夫の人
「世紀の空売り」 マイケル・ルイス著/東江一紀
「サイバー・クライム」 ジョセフ・メン著/福森大喜監修/浅川佳秀訳
「煙の樹」 デニス・ジョンソン著/藤井光訳


「世紀の空売り
金融システムそれじたいはいいことであると思う。なぜならそれによって経済が動き、回りまわって富が再分配されるであるから。しかしながら、国がこの金融商品はいいよ、とってもおいしいんだよ、やれ!護送船団方式というようになってしまうことがあり、民にはそれが分からないことは往々にしてある。そのなかで、その金融商品のひどさにいち早く気づき、それをしないという方にかけた人たちの話。結局「しない」という方にかけた人たちは儲かったのではあるが。

「サイバー・クライム」
もはやワールドワイドウェッブ自体が立ちゆかなくなってきている。日本がこれまでサイバー攻撃を受けなかったのは、頑丈なセキュリティシステムが構築されているからでR、なんてことは全くなく、単に言語の問題だけであって時間の問題である。というのを読んでいたら、ガンガン攻撃されているので、あらまーという。

「煙の樹」
上下二段組の本。ベトナム戦争にまつわるお話。緻密な文章で書き綴られているこの小説は、激しい波があるわけでもなく、退屈さえしてしまいそうな気にもなるが、この延々と続くかのような気持ち悪さが戦争を表しているようである。これとあわせて、「風の谷のナウシカ」。昔、読んだ時は、この漫画に描かれている宮崎駿の残虐さがいまいち分からなかったけれど、今ならこの残虐さが納得できる。また、あわせて「ベスト・アンド・ブライテスト」も。




巨匠とマルガリータミハイル・ブルガーコフ著/法木綾子訳(新訳じゃない方)
「殺人探求」フィリップ・カー著/東江一紀訳(世紀の空売りと同じ人が訳、決まりキンタマの訳のひと)
「ダマセーノ・モンテイロの失われた首」アントニオ・タブッキ著/草皆伸子


巨匠とマルガリータ
ようやっと読めた。精神を病んでしまったり、人が死んでしまったり、素っ裸で空を飛んだり、猫が喋ったり、巨匠の書いた/書くであろう物語に飛んだり、はっきりいってむちゃくちゃである。むちゃくちゃすぎて破綻してしまいそうであるがそうはならない。当時のソ連の恐怖政治の中、地下で秘密裏に書写したり口頭で覚えていたりして、必死で残してきたというのを考えると、その当時の体制を噛み砕いてユーモアでもって書ききったというのがすごい。


<次点>
「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」ジュノ・ディアス著/都甲幸治、久保尚美訳
一家にまつわるフク(呪い)、オスカーくんのNERDっぷり、男性は早死にし、女性は死にそうになっても生き長らえる、さて一家の呪いは、オスカーくんのドミニカノスたるための呪いは解けたのか、とかではあるけれども、語り手のユニオールくんこそが実はNERDであり、この物語が彼の創作であったのではないかという方に一票。


「天国の発見」ハリー・ムリシュ著/長山さき訳
ふたりの男性のスノッブさにむにゃっとなりそうではあるが、ふたりの男性、ひとりの女性。どちらのこどもなのか、というのが、イスラエルで出会った紫色の女性、そのうでに残る薄くなった刺青によってわかる。そしてふたりの男性、ひとりの女性の息子は、発見しちゃうのである。


「美濃牛」、「黒い仏」、「ハサミ男」、「キマイラの新しい城」、「鏡の中は日曜日」、「子どもの王様」殊能将之
殊能さんの、緻密に計算された文章、でも、まーったく、ありがたくない、というのがとても好きである。


「エンジン/ENGINE」矢作俊彦
女性上位時代!


「BA-BAHその他」橋本治
橋本治は現代を鋭く切り裂く小説を書くなあと読むたびに思う。常にup-to-dateなされている。この短編の中で、3代目組長とガンダムの話が、ザク萌だとかガノタだとかを一蹴してくれる内容。2代目に鉄拳制裁によって育てられた3代目は、男子たるもの戦いにおいては何をおいてもうんたらかんたらであろうから、アムロの「いつになったらぐっすり眠れるの」やら「お父さんにも殴られたこともないのに」の発言には納得しかねるであろうけれども、でも、実の息子には甘いというのに気づいているのかどうか、アムロどうなるのやら、アムロよ、と自分とアムロを重ねて見ているようだが、ある物を作らせて、乗った瞬間(しかも設計上、心臓部ではなく、頭の中)ガクンの落ちる、そうだもう自分は大人なのである、と気づくのだ。



追加の本棚が届いたので本を本棚から出したところ、いまは芸能人の歯並びなみに整列して本棚に収まっている。