イリノイ州はシカゴ、Soma Electric Studioからたゆたうようにのっそりのっそり四本足で出てきた亀吉御一行様ことTortoiseのライブに行ってきました。会場となるStall 6(シュタール・ゼクス:スイスドイツ語だと、シュタール“ザヒス”)の場所は家から歩いて20分くらいのところにあるレンガ造りの建物。会場に近付くとあの黒メガネのジェフ・パーカーとダン・ビットニーがどなたか知り合いの人と立ち話をしているではありませんか。2人ともよい意味でまったくアウラがなくその辺の中年のおっちゃんの雰囲気が漂っていてなんだかほっこりしました。入り口でクラブのように右手首に猫のハンコを押されて、いざいざ中へ。会場は、福岡でいうところのVooDooLoungeくらいの大きさで200~300人入れば満杯の縦長のハコ。さてはてステージはどこへやらと思っていたら一番奥の角にありました。つまりは長方形の2面が壁に接していて、残りの2面が観客側に面しているというもの。どこから見るのがいいのやらとうろうろっとして、落ち着いたところは、ツインドラムの片方のほぼ砂被り場所となりました。どんな位置で演奏をなされるのかと思っていましたが、ま、彼らはジェフさん以外、みなさんぐりんぐりんと楽器を交代しながら演奏をしていたので、結果どちらでもよかったのですが、幸運なことにジョン・マツケンタイア御大の横顔を見れる位置だったのでした。その他の奏者はマツケンタイア氏を見るような立ち位置で円形となっておりました。さて開始です。新譜の曲は残念ながらわかりませんが、Standersの1曲目のあのツインドラムがバカスカなる曲は、ドラムの音が強烈で延々かと思われ、頭がくらくら目がちかちかするくらい、そしてぶわーぬわーおわーと身体を覆う皮膚がうぶ毛がまつ毛がびりびりばりばり振動する圧倒されるすごさでした。口はもちろんあんぐりです。ドラムはマツケンタイア氏、ダン・ビットニー、ジョン・ヘーンドンですが、三者三様でありまして、特にマツケンタイア氏のドラムはものすごくタイトで、私は聞いていると拘束されてしまうような、息苦しいような、水中、それは苦しい、ような、そしてマツケンタイア氏の顔も苦しそうで目がイッちゃうんじゃないかしら、ああ私も同様に苦しい、苦しいわと思うのです。しかしながらそこに入るジェフさんが鳴らすギターの音。肌をなでるようなうっとりするような鳴り方、さらに入るヴィブラフォン、そこに優しさがあるような気がしてああもう素晴らしいと思うのです。また、私が聞きたいなと思っていたIt’s all around youに入っている、これまた稚拙な表現ですが、曲の途中でダーンダーンダーンと入り、その後、このアルバムのジャケットの風景がぶわーっと広がるような曲があるのですが、それも最初はその曲であると分からず、途中からおおこれだったのかと気づいたときにはそのアレンジの素晴らしさにこれまた口はあんぐりなのでした。ちょっとねぇ、すごい演奏でしたのよ。TNT(トリニトロトルエン、はい構造式もご一緒に)なんかはpro toolsここに極まれりなのではないかしらとおもうアルバムだと思うのですが、やっちゃいますもんね。このアルバムで”In Sarah, Mencken, Christ and Beethoven there were women and men” の曲が好きなのですが、彼らはその手でばっさばっさとやっちゃいます。
アンコールは3回。最初のアンコールの時は多分即興だとおもうのですが、ジェフさん以外はパンクバンド出身の皆様なので面白いくらいにへんちくりんなパンクの曲をやっておられました。しかしながらそのテクニークは阿呆のように素晴らしくこれのアルバムがでたら買っちゃうよと思うくらいでした。
また、ライブの前にDJさんが選び流す曲も面白いのでした。誰の曲かはわかりませんがダビーなダブからはじまりまして、次はマイルス・デイヴィス(私は勝手にミレス・ダヴィスと呼んでおります)のビッチズ・ブリュー、その後、スライ家に行ったマイルスがソファーの前のテーブルに、コカインをボールにてんこ盛りにしていたのを見て尻尾巻きそうになったというスライ・アンド・ザ・ファミリーストーンが流れまして、この曲をループにループさせてぐったりして麻痺してしまうくらいでしたが、それがまた素晴らしいのでした。
私は主にマツケンタイア御大のご尊顔を拝しながら踊っておりましたが、彼は演奏中にメンバーの方を見るのではなくて、かなりの割合で観客の方を見ながらバカスカとやっておられました。なんといってもやはり私は、マツケンタイア氏がドラムをたたいているときのああ苦しい苦しい顔も歪むし目もイってしまう寸前の顔がとても印象深いのでした。