Limmat川沿いのヤギ・イノシシ広場には秘密の扉がありまして、それはとても小さく、人間などが入れる代物ではありません。果て一体どのようなもののための扉であるのかというのは、それを見ればすぐさまわかることなのですが、ヤギにイノシシに隠れて(なのかどうかはわかりませんが)さむいときにはヤギの寝床で夜と昼とをあかし、彼女は生き延びていたのでした。というのは大げさですが、私がもしこの動物を育てることになったらロシア系の名前をつけようと考えていましたので、とりあえずスイスの私の猫ということで、勝手に名前をつけさせてもらいました。私たちがその広場に近付いて彼女を呼ぶといとも簡単に近寄ってきてなでさせてはくれるのですが、猫なで声なんていうものは出さず、常に周りを監視しているとても用心深い猫なのでした。彼女の名前は、「アントニーナ・グリゴーリエブナ・ゴルバチョワ」です。愛称は名前を使うのでもなく、名字を使わせてもらって、ゴルビーと呼んでいます。右から左へ、いや、左から右でもかまいませんが、瞼が一直線なところがとても好きであり、私はゴルビーのチャーム・ポイントであると認識しています。