2日目。朝起きてホテルの受付の女性に「夜に、戻ります。」というのを起きぬけに電子辞書で調べたフランス語でいうと、見事にフランス語で返答があり、夜は違う人がここにいるけど、わかったわ、というような内容だったとしか思えないので、「ヤー、メルシー、オーボワー」(ボワーの前にアールの発音)と言ってホテルを去る。はい、ここで間違いを犯しています。「ヤー」ではなく「ウィ」である。わたしは「はい」というのを無意識で「ヤー」(この発音ものどの奥で発声するのでヤーとヨーの中間)と言ってしまうので、英語でも「ヤー」、ここでも「ウイ」ではなく「ヤー」。集中しないとほかの言語の「はい」が言うことができないというジレンマ(これはギリシア語)。
頭の中で「ウィ、ウィ、ウィ」と唱えながらPantheon(パンテオン)を目指して歩き、今日の目的地であるle Jardin des Plantes(植物園)に向かう。わたしは決して方向音痴ではないと思うのであるが、このパリのクモの巣のような道に、蝶ではなく蛾のようにつかまってしまって、大回りをしてようやく到着することができた。地図上で感じる距離よりもはるかにパリは大きいのでした。植物園は地球の歩き方にも書いてあるように、「ルイ13世の主治医が造った薬草植物園を基礎に整備された」という植物園。植物園内には、色々な博物館があったのであるが、Grande Galerie de l’Evolution(進化大陳列館)に入る。動物の剥製がずらーと並べてあって、上の階ではこうやって進化してきたとーという説明もあり、絶滅危惧種もしくは絶滅機種の剥製もものすごくくらい場所に鎮座していた。上野公園にある科学博物館もこういう展示であったような気がする。全館吹き抜けで上の階は回廊のみという構造であった。また、ここはおフランスですから説明書きもおフランス語のみ。そのエレガントさに歯がゆくなりますが、全館をみて2階のカフェで休憩をしていると子連れのお母さんがわたしの座っているテーブルにつかつかつか「Pardon!」と。何でしょうと答えると、これまたフランス語で「ベラベラメラメラ〜ベラベラべら〜、スィルヴプレ!」というので、そのお母さんのしていた動作から察するに「トイレに行くので席を少し外すのだけれど、あの子を見ていてくれる?」というので理解。「ウィ」というと嬉しそうにトイレに向かったのでたぶんあっているのだろう。スイスでも思ったのだが、子供をひとりにさせるというのはあまりよろしくないようで、小学校でも親のお見送り/お迎えが絶対なのでフランスでもそうなんだろうな、だから、わたしに子供を見ててちょうだいと言ったのだろうなと思う。しかしながら、カフェにはもっとフランス語が話せそうな人たちが多数いらしたのに、黄色い顔したわたしになぜ頼むのかしらと思ったのは言うまでもありません。あれよと時は過ぎ、マンデル達と待ち合わせをしている彼女らの泊まるユースホステルに向かう。ここでもわたしは阿呆なことをしてしまって、マンデルの名前を日本語の読み方でしか覚えてなかったということと、もしかするとマンデルの名前でなく従姉妹さんの名前で予約してるかも、ということであった。もちろん従姉妹さんの名前も聞くのを忘れている。受付の女性に話している最中に、阿呆なわたし、思う。その女性も色々名前を探してもらったのだけれど、やはりマンデルの名前はなく、今日スペインからパリにやってくるので、ソファーで待たせてもらうことに、、というところで、さすが、マンデル到着。久しぶりのマンデルは前のマンデルと変わりなく、一瞬にして4~5年が戻るようでした。また、従姉妹のAmyさんとYvonneさんは6カ月のバックパッカー中であり、南米からユーロ圏(ポルトガルですら!)にきたときの物価の高さに悲しんでいた。さらにParisが高いのは当然。でも、Parisは高いというけれど、スイスから来た身としてはパリの物価とスイスの物価はぎゃんというほどの違いはなくて、おんなじくらいなのじゃないかしらと思うが、むしろパリのほうが安くておいしい軽食の多いことよ。で、彼女らのバックパックはわたしの40Lなんか比べ物ならないくらい大きくて、抱えるのも大変だろうなと思う。しかしながら、Yvonneさん、ニコンの望遠レンズ付きの一眼レフでガッと構えて、ジャッと覗き込んで、バシャッと撮る、という一連の動作をすべて右手でなさるのだからとても男前である。うっとり。
まずは腹ごしらえということで、クレープを頬張る。塩系のクレープもあったけれど、わたしはバナナと砂糖のクレープを食べる。これでもバナナ一本入るのでそれで満足。マンデルのは、ヌテラというピーナツバター・ミーツ・チョコレートという鼻血が出そうなソースとバナナ。このヌテラはスイスにも売っておりました、が家に常備するかというとそういうことはなさそうです。ストレスがたまった時のストレス食いにもってこいの商品な気がしますが。必要になる日は来るのかどうなのか。
その後、4人でパリ市内をぶらぶらと歩く。あっという間に夜になって、夜ごはんはケバブ。スイスにもケバブはありますが、そのメニューの豊富さたるやパリにはかないません。また、サイドメニューもものすごい充実していて、そういうところはうらやましいなあと思うことしばし。
従姉妹さんたちはやはり長旅で疲れたようで、先に就寝。わたしとマンデルは二人でソルボンヌ大学近くのバーへ向かう。赤い壁の艶光した古い椅子に座って、1664のおフランスビールと安くて外れがない赤ワインのCote du Rhoneを飲み、チーズとハムだけと思って注文したら、チーズとハムが挟まれたサンドイッチになって出てきたのを二人で分けつつ夜は更けていくのでした。